相続不動産に明治~大正時代の抵当権がついていたので、相続手続きと合わせて抹消したケース
今回は相続した不動産に明治~大正時代の抵当権がついていたケースを解説いたします。
状況
依頼者の親御さんが亡くなられたとの事で相談に来られました。
そこで、相続財産を調査した所、不動産に明治~大正時代につけられた抵当権がついていたことがわかりました。
明治~大正時代の抵当権の背景
明治~大正時代の日本では、急速な近代化に伴い、不動産を担保にお金を借りることが一般的になりました。この時期に設定された抵当権が、時代を経る中で適切に処理されないまま残っていることが多く見られます。これにはいくつかの理由があります。
書類の紛失と手続きの忘却
当時は書類の保管方法も現在ほど厳密ではなく、借金が完済された後に必要な抹消登記の書類が紛失されることがよくありました。また、抹消登記の手続き自体が忘れられたり、関心を持たれなかったりすることもありました。世代を重ねるごとに、これらの抵当権の存在自体が忘れられるケースも少なくありません。
現代における影響と対応
現代において、これらの古い抵当権が残っている不動産は売却や新規の住宅ローンの取得に際して大きな障害となることがあります。特に、登記がきれいな状態でないと買主や金融機関からの信頼を得にくくなるため、相続登記と合わせて抹消登記を行うことが強く推奨されます。
銀行の合併と抵当権の抹消
明治~大正時代に設立された銀行はその後、複数回の合併を経て現在の銀行に引き継がれていることが多いため、現存する後継銀行に問い合わせて抹消登記書類を発行してもらう必要があります。この手続きには、合併の証明書の取り寄せなど時間がかかる場合があります。
個人債権者の場合の手続き
債権者が個人で、かつ行方不明の場合、債権受領の催告を行い、それでも連絡がつかない場合は法務局に供託することで抹消登記を行います。この手続きでは、登記簿に記載された情報を基に現在までの元利金を計算し、供託金を法務局に預ける形になります。貨幣価値の変動を考慮しないため、実際に供託する金額は当時の額面での計算となります。
司法書士の提案&お手伝い
実際に明治~大正時代の抵当権が付いたままの不動産と言うのは地方では意外とある物です。借金の担保として抵当権の登記をつけたものの、完済後の抹消登記の書類を無くしたり、抹消登記の手続きを忘れたり、世代を重ねることで存在自体を互いに忘れるなどがよくあります。
競売を申し立てられる可能性はまずないと思われるので、そのままにしておかれるケースもございますが、将来的に売却や住宅ローンなど担保に入れる場合に、これらの登記を抹消するのには時間がかかりますので、売却や新規担保設定つまり借入に時間がかかったり、障害となるケースもございます。そのため、相続登記にあわせて抹消登記をお勧めしております。
以下は手続きの一例です。
抵当権者=債権者が銀行で、後継銀行が現存の場合
当職からその銀行の支店等に問合せ、抹消登記書類を発行していただきます。合併(明治期の銀行などは合併を重ねているケースが大半です)の証明書の用意に時間がかかる事があります。
抵当権者=債権者が個人で、行方不明の場合
当職から債権受領の催告を債権者に送り、届かない場合は、登記簿に記載された情報を基に現在までに元利金を計算し、法務局に供託することで完済として抹消登記を行う手段がございます(休眠抵当権抹消)。
この場合、貨幣価値の変動は考慮しないため、例えば明治時代の500円は、現在の貨幣価値に換算すると1000万円程度(参考)の価値と言う話もありますが、供託の前提となる計算ではあくまでも500円で計算します。そのため、利息を含めても供託するのは1000~2000円程度となるケースが多いです。
古い登記簿の確認や不在証明の発送及び返送など、手続きに数週間以上かかる事があります。
結果
担保権の付いていない、いわゆるきれいな状態で相続登記を完了し、無事に登記簿謄本などをお渡しいたしました。
上記以外の例もございます。また、古い抵当権の抹消登記だけも承っておりますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください>>