【司法書士が解説】相続人と連絡が取れない・海外在住…遺産分割が進まない時の対処法
目次
相続人と連絡が取れない・海外在住…遺産分割が進まない時の対処法

遺産相続の手続きを進める中で、「相続人の一人とどうしても連絡が取れない」「相続人が海外に住んでいて手続きが難しい」といった問題に直面することは少なくありません。
このような状況では、遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)ができず、不動産の名義変更や預貯金の解約などが滞ってしまいます。
この記事では、相続人と連絡が取れない場合や、相続人が海外にいる場合の具体的な手続きの流れ、法的な解決策について、当事務所の解決事例を交えながら詳しく解説します。
連絡が取れない相続人を放置するリスク
連絡が取れない相続人がいるからといって、その人を抜きにして遺産分割協議を行うことはできません。もし行ったとしても、その協議は無効となります。
この状態を放置すると、以下のような様々なリスクが生じます。
- ・遺産分割協議が進まず、相続手続きがいつまでも完了しない。
- ・不動産を売却したり、賃貸に出したりといった活用ができない。
- ・相続財産である預貯金が凍結されたまま解約できない。
- ・相続税の申告・納付が期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)内にできず、延滞税などのペナルティが発生する可能性がある。
どうしても連絡が取れない場合の法的手続き
戸籍や住民票をたどっても行方が分からない場合、家庭裁判所での法的な手続きを検討する必要があります。
主な手続きは「不在者財産管理人の選任」と「失踪宣告」の2つです。
不在者財産管理人の選任
不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって財産を管理し、遺産分割協議などに参加する権限を持つ人のことです。
家庭裁判所に申し立てて選任してもらいます。
【手続きの流れ】
- 申立て:利害関係人(他の相続人など)が、行方不明者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
- 審理:家庭裁判所が申立て内容や書類を審査します。
- 選任:家庭裁判所が不在者財産管理人(弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多い)を選任します。
- 遺産分割協議:選任された財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。
失踪宣告
失踪宣告とは、長期間にわたって生死が不明な人に対して、法律上「死亡した」とみなす制度です。
これにより、その人は相続人から除外され、残りの相続人で手続きを進めることができます。
【失踪宣告の要件】
- 普通失踪:最後の音信から7年間、生死が不明な場合。
- 特別失踪(危難失踪):戦争や海難事故など、死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後1年間、生死が不明な場合。
【手続きの流れ】
- 申立て:利害関係人が、行方不明者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
- 調査:家庭裁判所の調査官が、親族への聞き取りなどを行います。
- 公示催告:官報や裁判所の掲示板で、行方不明者に対して生存の届出をするよう、また、その所在を知る人に対して情報提供を求める公告をします(期間は3か月以上)。
- 審判:期間内に届出がなければ、家庭裁判所が失踪宣告の審判を下します。
- 確定・届出:審判が確定したら、10日以内に市区町村役場に失踪の届出を行います。
(引用:裁判所ウェブサイト「失踪の宣告」)
海外在住の相続人がいる場合の手続きと注意点
相続人が海外に住んでいる場合でも、日本の法律に基づいて相続権があります。ただし、国内での手続きとは異なり、主に書類の準備に注意が必要です。
遺産分割協議で合意した内容をまとめる「遺産分割協議書」には、通常、相続人全員が署名し、実印を押印、そして印鑑証明書を添付します。
しかし、海外在住者は日本に住民票がないため、実印や印鑑証明書を用意できません。
そこで、これらの書類の代わりとなるのが「サイン証明書(署名証明)」と「在留証明書」です。
- サイン証明書(署名証明):遺産分割協議書などに本人が署名したことを、現地の日本領事館で証明してもらう書類です。これが印鑑証明書の代わりになります。
- 在留証明書:海外のどこに住所があるかを証明する書類で、これも現地の日本領事館で発行されます。住民票の代わりとなります。
これらの書類は、郵送でやり取りする必要があるため、国内での手続きよりも時間がかかります。
相続手続きを始める際は、早めに連絡を取り、必要書類の準備を進めてもらうようにしましょう。
【解決事例】アメリカ移住後40年以上、音信不通だった相続人がいたケース

ご依頼者の状況
親御さんの相続登記についてご依頼いただきました。詳しくお話を伺うと、相続人であるご兄弟の一人が40年以上前にアメリカに移住して以来、完全に音信不通とのことでした。
調査したところ、住民票も昭和40年代に職権で抹消されており、連絡先をたどる術が全くない状態でした。
当事務所の提案と結果
このケースでは、長期にわたり音信不通である状況から、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることを提案し、ご依頼者様の了承を得ました。
早速、戸籍収集と並行して失踪宣告の申立てを行いました。
家庭裁判所から外務省などへの調査を経て、申立てから約1年後、公示催告の上で失踪の審判が下されました。
審判確定後、速やかに市役所に失踪の届出を行い、新しい戸籍が編成されたことを確認して、無事に相続登記を完了させることができました。
このケースのポイント
失踪宣告は有効な手段ですが、審判が下りるまでに1年以上の時間がかかることも珍しくありません。
特に佐世保市は、歴史的背景から海外へ移住し、その後ご親族と連絡が取れなくなるケースが見られます。
相続財産の売却などを急ぐ場合は、手続きにかかる期間も考慮し、一日でも早く専門家へ相談することが重要です。
法的手続きができる佐世保市の機関
失踪宣告や不在者財産管理人の選任といった法的手続きは、家庭裁判所で行います。
佐世保市にお住まいの場合、管轄は以下の通りです。
長崎家庭裁判所 佐世保支部
住所:〒857-0805 長崎県佐世保市光月町9-4
電話番号:0956-22-9175(代表)
まとめ:複雑な相続手続きは専門家にお任せください
相続人の中に連絡が取れない方や海外在住の方がいる場合、ご自身で手続きを進めるのは非常に困難です。戸籍の収集や裁判所への申立てなど、専門的な知識と多くの時間が必要となります。
当事務所では、司法書士が相続人様の窓口となり、煩雑な手続きをすべて一括でお引き受けする「相続手続丸ごとサポート」をご提供しております。
佐世保市を中心に長崎県全域から多くのご相談をいただいておりますので、お困りの際は、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
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